野沢温泉村のトレイルレースで行方不明者が出た件についての考察【山岳事故】

野沢温泉村のトレイルレースで行方不明者が出た件についての考察【山岳事故】

2019年7月19日 オフ 投稿者:

皆さん、こんばんは。社団法人ランナー龍(たつ)です。

 

2019/07/14 に長野県、野沢温泉村で開催されるトレイルランニングのレースで行方不明者が出たニュースについては、皆さんご存じかと思われます。

トレイルレース中にコースロスト(コースを見落とす)することはよく聞く話ですが、行方不明のまま、数日が経過して未だに発見されない話はあまり聞いたことがないこともあり、私も経過を心配しておりましたが、

大会HPの告知によると、行方不明者の捜索が一旦打ち切られたことが報告されました。

私がこのニュースを見かけたのは、2019/07/15 です。そしてこの記事を書いている2019/07/18 に大会HPの告知を見るまでは、捜索についての進捗や情報が一向に見られないことから、まだ発見されていないであろうことは想像していましたが、あまりニュースに具体的に出すと、有志による捜索などで二次災害を招く恐れがあることからの配慮があったのかもしれませんね。

 

捜索は打ち切られたものの、1日でも早く生きて発見されることを祈っております。

 

今後の動向に注目することや、改めて、トレイルレースにおけるコースロスト、及び遭難について考えるきっかけとして、記事にしておきたいと思います。

 

この記事は、

1.このニュースの概要について

2.行方不明になったあとの仮説

3.トレイルレースで行方不明にならないためのフローチャート

以上の3本立てになっております。

ニュースに注目している方はよろしければ、ご一読ください。

 

※この記事は2019/07/18 時点の情報により書かれた内容になります。限られたニュースからの情報からの個人的な検証であること、ご了承ください。

 

 

ニュースの概要について

さて、本件のニュースの記事は色々と出ておりますが、野沢温泉村でのトレイルランレース中に62歳の男性が行方不明になったとの簡易的な情報のみのものが多く、正式な大会名などは公表されていませんでした。

これは、二次災害の予防や、ご家族の方への配慮などが考えられます。この記事を書いている現在は、既にご家族の了承を得て公式HPで事故についての報告がなされています。

少ない情報の中でも、より詳細に情報の記載があった記事、及び文章を、

7/15日 7/16日 7/17日 それぞれの記事を紹介することでの3日間の状況の変化が伝わるよう、紹介します。

 

2019/07/15の記事

長野県野沢温泉村で登山道などを走るトレイルランの大会に参加の男性が行方不明になり、警察などが捜索しています。

 行方が分からないのは、さいたま市の62歳の男性です。警察によりますと、男性は14日朝から野沢温泉村でトレイルランの大会に参加中にルートを誤って赤滝付近の山林で道に迷い、午後3時ごろに携帯電話で大会主催者に通報したということです。その後に男性の携帯電話がつながらなくなり、居場所が分からなくなっていて、警察などが捜索を続けています。

引用:LiveDoor NEWS https://news.livedoor.com/article/detail/16776589/

 

 

2019/07/16の記事

トレイルランで不明の男性 捜索続く

野沢温泉村で、トレイルランの大会に出場していた男性の行方がおとといから分からなくなっていて警察などが捜索を続けています。
行方が分からなくなっているのは、埼玉県に住む62歳の会社員の男性で、きょうは警察や消防などおよそ50人が、捜索にあたっています。
警察などによりますと、男性はおととい、野沢温泉村で開かれたトレイルランの大会に出場しましたが、当日の午後3時ごろ、「道に迷った」と携帯電話で主催者側に連絡し救助を求めたということです。
男性は65キロの行程を1人で走るコースに挑戦していて、男性が最後に目撃されたのはスタートからおよそ12キロの地点ということです。

引用:dmenuニュース http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/sbc21/region/sbc21-0356264

 

 

2019/07/17 公式HPの告知 ※一部のみ抜粋

一部報道にありますように、さいたま市の62歳男性参加者の行方が分からない状態となりました。

ー中略ー

「道に迷った」とゼッケンに記載している事務局番号へ携帯電話から連絡を受けました。しかしながら、事務局から「その場を離れないように」との連絡を最後に現在まで行方が分からない状態です。

ー中略ー

ヘリコプターの出動を含めた捜索を続けておりましたが、本日まで不明男性を発見するには至っておらず、ご家族の同意のもとに捜索本部は本日をもって解散いたしました。

警察及びご家族からの同意が得られましたので、皆様にご報告申し上げます。

引用:大会公式HPより

 

このように、捜索が打ち切られるまでの経緯が記載されております。

大会名はThe 4100Dマウンテントレイルin野沢温泉です。

野沢温泉での65キロのレースはこれしかないよなと思っておりましたが、その通りでした。

このレースは私も出ようと検討していましたが、近い日にちに草津のSPAトレイルに出場するので今回はパスした経緯がある。

サロモンやアメアスポーツジャパンが協賛しているS-mountainシリーズのレースだ。

ロングは65キロ。標高差4100m。なかなか走り甲斐がある。制限時間が18時間もあるのはランナーに易しい配慮か、それだけ時間がかかる何かしらの理由があるのかわからないが、やっぱり長いような気がする・・・

 

行方不明になったあとの仮説

先ほど述べた3つのニュースから考えることとするが、赤滝付近の山林で道が分からなくなったとの事だが、レース中ということで、大きく移動している可能性があり、見立てが難しい。

ただ、最後に選手を目撃されたのがスタートして12キロの地点ということなので、随分とレースの序盤でコースロストしたんだなという印象。

レースのスタート時間が AM7:00  12キロ地点に到達するのは、ゆっくり走っても2時間あれば着くだろう。

しかし、行方不明の男性が運営に電話をしたのは PM2:00~3:00 だ。

仮に12キロ地点付近で迷ったとしたら、運営に電話を掛ける判断に至るまでに時間がかかりすぎている。コースに復帰するために数時間走ったり歩き続けているのだから、この時点で既にだいぶ違う位置に移動してしまっている可能性がある。

赤滝あたりというのは赤滝登山道のエリアだろうか。赤滝登山道は野沢温泉村にある毛無山に登る登山道であり、毛無山の山頂の標高は1600m。

先ず、エリア一体は低山帯である。標高が低い~2000mくらいまでの低山と言えば、特に夏場は蒸し暑いことで登山者も遠のくこともあり、人の手が入らないことで草木が生い茂り、藪漕ぎを強いられることすらあるのだ。

夏の雲取山周辺(奥多摩)

雲取山を例に例えたが、メジャールートでこんな感じである。

但し、夏場でも登山者が多く訪れてよく整備されているような登山道はこの限りではないが。

赤滝登山道は、YAMAPやヤマレコで調べる限りでは登山口さえ見つけにくかったという記事もあり、整備されているというよりかは、より自然が色濃く残るエリアであることを想像する。

どちらにしても、標高が低い山ほど遭難しやすく、注意しなければならない。

赤滝周辺で道迷いを起こし、コース復帰できなかったとすると、道なき道をひたすら進んだのだろうか。

地図を見る限りでは付近のスキー場に出れれば良いのですが、スキー場方面でなく、コース方面でもないということは、かなり山深いエリアになってしまい、地図、コンパス、地図表記ができる腕時計などの有効利用ができないと脱出が難しくなってしまうでしょう。沢筋もたくさんありそうなので迷うとやっかいです。

標高を上げながら進んでいる場合は別ですが、いち早く脱出したい気持ちでひたすら下り方面に進んだり、同じ場所を複雑に進み続けると、やがて沢筋にぶつかり沢沿いを下っていった結果、滝壺に滑落してしまう恐れがあります。行方不明になって数日経過していることから捜索隊もこの滑落も想定に入れながら捜索活動を行っていたものと思います。

迷ったときに動かずその場に留まることも有効なのですが、携帯も無くしたか電池が切れて通じない状況で山の中腹の樹林帯で待機していても事態は好転しない場合があると思います。ある程度、山頂の近くとか、救助ヘリに姿を晒すことが出来る位置までは、体力を温存しつつ移動した方が良いと個人的には思います。

本当に迷ったときは、下るより、登る。です。

 

トレイルレースで行方不明にならないためのフローチャート

私が経験上、道迷いを起こしやすいと思う状況は以下のパターンだ。

・走っている

・急いでいる

・焦っている

・日没している

・下山している

この条件に当てはまる場合、普通に登山している時に比べて数倍の可能性で道を間違えると思っている。複数当てはまったらかなりリスキーである。

上記はいずれも注意力や視野が狭くなっているため、分岐などを見落としてしまうのだ。

 

トレイルレースは最初から迷いやすい条件に当てはまっているので、道を間違えることが前提であることを念頭において挑む必要がある。

 

コースロストは私も経験がありますし、呼びかけで助けてもらったこと、助けたこと、両方とも経験しています。

道迷い前提のレース記事はこちら

三浦アルプスは標高も200m程度で視界に民家や道路が見えている場合が多いので道迷いは起こしても、さすがに行方不明にはならないのではと思っております。長野県ではそうはいかないでしょう。

 

前置きが長くなりましたが、トレイルランニングのレースにおいて行方不明にならないためのフローチャートを箇条書きですが、簡単に記載します。あくまで参考程度にどうぞ。

A【道迷いを疑いコース復帰を試みる】

1.10分以上、コース案内表示の看板や矢印、テープなどが見られなければ、コースロストを疑い、地図を確認し、前後の選手と相談しながら、来た道を戻るなどの判断をする。明らかな分岐点に何も案内がない場合はコース外に出てしまっている可能性が高い。コースロストを疑うべき。どのくらいの間隔で案内板があるのかは、事前に確認しておくべきである。

 

2.1の状態で、前後に選手すら居ない場合、コースロストの可能性が高い。即座に地図等を確認し、来た道を戻りながらコース復帰を試みる

 

B【運営に連絡 指示を仰ぐ 登山道復帰を試みる】

1.10分以上はコース復帰が試みるも、コースに戻れる兆しが見えない場合は、運営に連絡する。連絡する際に、どの地点でロストしたか可能な限り具体的に伝える。現在地が、整備された登山道なのであれば、下山できる場合はそのことも伝える。

 

2.大会の規約で、運営の指示に従うことが前提であった場合、絶対に動くなという指示がでれば留まるべき。ただ、その場所が危険であった場合は安全な場所まで移動して待機することは言うまでもない。この時点で、レースに復帰するというより、登山道に復帰する、無駄に体力を消耗させないなど、レースモードから登山モードに頭を切り替える必要がある。登山道に復帰できているのであれば、下山できる場合はその旨を運営に伝えた上で下山し、下山後は必ず報告。

 

C【救助隊に発見されるよう試みる 登山道復帰を試みる】

1.携帯電話などの連絡手段が途絶えてしまった。一向に、登山道に復帰できない場合、太陽の方向、鉄塔、山頂など特徴になるものををランドマークに地図とコンパスを使ったうえで現在地の予測をとる。むやみな下山は試みず、標高を上げながら、登山道の発見や救助隊に見つけてもらえそうな位置への移動を試みる。

 

このようなフォローチャートを脳内にインプットしていますが、最低限のコース整備はしているであろうトレイルランレースなので、A-1か、A-2くらいの状況はあり得るだろうが、それ以上のケースはちょっとなかなか想像がつかない。まれにB-1くらいまでではないだろうか。行方不明が散見されてはこのスポーツが成り立たなくなるではないか。

 

さいごに

ここまで長い文章を書いた理由として、自分自身の道迷いの経験があり、その思い出が強く残っているからである。最後にその経験談を簡単に書いて終わりにしようと思う。

 

これはまだ私が登山、トレイルランニングを始めたばかりの頃で、このときはトレイルランニングの練習で丹沢に行った時の話である。

御殿場須走エリアから丹沢方面にある三国山から道志方面への甲相国境尾根を走行していて、高指山のあたりで、分岐を間違えて獣道に入り込み、明らかに予定外の下りが続いていることから道間違いを起こしたことは明らかだったが、疲れていたこともあり、ひたすら下り続けたら遂に道が無くなったのだ。

そして近くで沢の音が聞こえ、沢筋に入り込んだ時点でこれまでに本で読んできた遭難事例が頭をよぎって怖くなり、全部登り返すことにしたのだ。

登り返す過程で、登山道に復帰し、予定とは異なるルートになったが無事下山となった。当時は地図も持参しない愚か者であり、このまま下り続けていたらと思うとゾっとする。

この経験以降、必ず地図を持参し、ルートの確認にも慎重になりました。

まだまだ経験が浅いので、精進したいと思っている次第である。

ではまた!