中央アルプス 木曽駒ケ岳に向かった男性の遭難死の背景
皆さん、こんにちは。社団法人ランナー龍(たつ)です。
2021/02/07(日) 山梨県在住の29歳の男性が中央アルプスの木曽駒ケ岳の登山に出掛け、悪天候による行動不能・遭難により、翌日死亡が確認されたという記事を見かけました。
今回のようなケースの場合、ここでいう「遭難」の意味は、行動不能による凍傷、低体温症を指していると断言できそうです。
お亡くなりになられた方にご冥福をお祈り申し上げます。
厳冬期の遭難事故は毎年聞きくのですが、
それに並び、この中央アルプスエリアの事故も、この時期・・特に2月の連休の間や週末などで定期的に発生している印象を持ちます。
同エリアの事故についてはこちらにも書いています。
さて、今回の遭難死に至ってしまった背景、中央アルプスの状況はいかがなものだったのでしょうか、
少し、掘り下げていきたいと思います。
遭難事故の概要
ニュースは以下の通りです。
中央アルプス 駒ケ岳に登った山梨県の29歳公務員男性が遭難死 7日午後から天候悪化か
きのう7日、中央アルプスの千畳敷から木曽駒ケ岳に向かい遭難した山梨県の公務員の男性が8日午前、遺体で見つかりました。
死亡したのは、山梨県昭和町の公務員・臼井洋人さん(29)です。
臼井さんは7日に千畳敷から日帰りで木曽駒ケ岳(標高2956メートル)を目指しましたが、下山中の同日午後3時過ぎ、駒ヶ岳と千畳敷の間の中岳(標高2925メートル)で悪天候のため行動不能になり、救助を要請していました。
8日朝から県警の山岳救助隊員と中央アルプス遭対協の12人が救助に向かいましたが、午前11時前、中岳の山頂付近で心肺停止の状態で倒れている臼井さんを発見。
改めて、お亡くなりになられた方に対しご冥福を申し上げます。
この記事をよく読んでみると、その状況や遭難に至った背景などがある程度、想像できます。
5つを踏まえ状況を分析
あくまでニュースの記事の情報だけによる個人的な分析ですが、
・当日の状況
・装備
・技術
・計画
・メンバー
この5つの項目を踏まえてまとめてみたいと思います。
【当日の状況】ですが、ご本人が行き倒れた「中岳」の山頂付近は稜線上であり、遮るものは無い。山頂付近なのであまり距離を動かず待機していたのかも知れません。
中岳は私も木曽駒ケ岳を登るために登った(通過)した山になりますが、あまり過酷な記憶がなく薄い印象です。とはいえ、千畳敷から中岳、そこから木曽駒ケ岳の移動も冬季の暴風域となると移動は容易ではない。
標高は2,956m、3,000m級の稜線はもっとも過酷な位置になる。
この時期、中央アルプスの標高3,000mあたりは、風が強い日の場合、
風速 20m/s 気温 ̠マイナス 10℃
風速も考えると体感温度は遥かに低いのではないでしょうか。
この風速ではまともに歩けない状態でしょうし、積もった雪がえぐられて視界も見えないでしょう。
狐につつまれたような状況にパニックになりそうですが、ここで救助は要請されているようです。
それでも、12名の救助隊が向かったのが翌日朝ということを考えると、救助要請が夕方であったか、風速などから救助に向かえる状況に無かったことが考えられます。
出典:駒ヶ根ロープウェイホームページのライブカメラより 最新の千畳敷の様子
千畳敷の様子です。ロープウェイでここまで行けます。
天候は穏やかだが、
パッと見、どうみても雪崩の危険を感じます・・・・・
【装備】【技術】については、日帰りということで、既に着ている防寒具と最低限の飲料などのみであり、重装備ではないことを想像します。
千畳敷から木曽駒ケ岳に向かうということはロープウェイに乗ってアクセスしていると思います。というかこの季節、ロープウェイ使わないと日帰りの木曽駒ピストンは無理だと思いますので。
ロープウェイの運転時間は、冬季で概ね 9:00~16:00 です。
それを考えると、下山中の午後3時の時点で中岳の山頂付近にいるというのはスケジュールミスか、体力が不足していたのか・・・
装備・技術が充実していたとは考えにくいです。
又、スノーシュー、アイゼン、スパイク、ピッケル、ザイルなどの持参があったかどうかは不明です。(さすがにアイゼン、スパイクは装備済みか)
【計画】【パーティー】こちらについては、前途した通り、予定した計画通り行動てきていないことは間違いなさそうです。
何しろロープウェイで簡単に厳冬期の標高3,000mに行けてしまうわけであり、登山者のレベルも様々で、色々な方が行かれているものと思われます。
今回の方は、単独で行かれていたようですが、山梨在住ですので、山は身近であり、公務員ということで、一般の会社員に近いような感覚で考えると主に週末になると山に登られていたのかもしれません。
単独の登山は良い点と悪い点があり、その判断は難しいです。人数が多いほど時間がかかり計画も狂いやすいですが、人数が多ければ人の助けを借りることが出来ます。
もし、あまり慣れていないのだとすれば、熟練の人をリーダーとした複数人での行動が理想的だったかもしれません。しかし、逆に経験値のない方を引率して行ってしまった場合、集団遭難を引き起こすことにもなり得ます。
計画的に無理があったとまでは言えません。とはいえ、強風にさらされるなどして進退窮まることも計画上、想定しておく必要はあります。
逆に晴れて気温が上がり、雪が解けていくシチュエーションも危険が伴います。
まだ29歳の若さで命を落とすことになり、残念です。
雪山をやらない私が言えた口ではありませんけど。。
同じ木曽山脈の稜線で発生した大量遭難事故について書いた記事はこちら
遮るものがない稜線の危険性について書いています。
雪山をやらない私ですが、
私の好きな「男澤ヒロキ」選手が、この中央アルプスはもちろん、ガンガン雪山にアタックしており、男澤さんのブログを私も愛読しております。
男澤ヒロキ選手のブログ 突っ込め突っ込めわ~お!
スノーシュー、アイゼンスパイク駆使してラッセルしながらガシガシ登り、無人の避難小屋、テント、時には雪洞を掘って夜を凌いでいたりしています。
こういった究極の山屋さんが雪山をやるものだと思っている私ですので、なかなか雪山には挑戦できずにいます。装備も持ち合わせていないし。
実際の状況と相違がある可能性もありますが、一言でいえば、厳冬期の標高3,000m級の世界は体を遮るものがなく、過酷です。
行ってみたものの、暴風が待ち構えており泡を食うことになってしまうかもしれません。
このようなことから、冬山を始める場合は標高の低いところから徐々に慣れて回数を稼ぐ、ステップを踏んでいくことが良いかと私は思うのです。
冬山を安全に楽しんでいただければ幸甚です。
ではまた!