遭難初期の心理状態 ダイニングクルーガー効果
皆さん、こんにちは。社団法人ランナー龍(たつ)です。
遭難の定義は幅広く、それは道迷いだけでなく低体温や怪我なども含まれます。
この遭難のニュースは後を絶たず、冬は冬山特有の遭難が必ず発生してきます。
特に年末年始には、その特別な時間や美しく静かな冬山を楽しむためにたくさんの登山客が山に訪れている。
2023年年始 遭難事故の速報
早くも、コースロスト又は滑落、雪崩等による遭難のニュースが入ってしまいました。
バックカントリーのスノーボードで遭難か 北アルプス八方尾根で東京都と松川村の30代男性2人行方不明 麓の駐車場で車を発見
長野県白馬村の北アルプス・八方尾根でスノーボードをしていたと見られる都内と長野県松川村の男性2人が行方不明となり警察が捜索しています。
行方がわからなくなっているのは、いずれも会社員で東京都世田谷区の31歳男性と松川村の34歳男性です。 2人はバックカントリーのスノーボード仲間で、白馬八方尾根スキー場の上にある山荘に出された登山届から8日に入山して崩沢を滑走しようとしたと見られています。しかし、夜になっても帰らず電話なども通じないため親族が警察に届け出ました。
八方尾根はすぐ麓が白馬村になり、私も確かトレランで走ったことがある場所だったと思います。そんなに奥まった秘境では無かった記憶なのですが、バックカントリーということで、そこは何とも言えません。
幸い、天候が良いとのことなので捜索活動が捗ることを願っております。
もう1つ、あります。
八ヶ岳連峰赤岳の岩場で転落 救助要請して4日後…稜線から約100m下で発見 愛知県の48歳男性死亡
1月2日、八ヶ岳連峰赤岳で遭難した男性について、6日、捜索していた富山県警のヘリが男性を発見、救助しましたが、死亡が確認されました。
死亡が確認されたのは愛知県豊田市の会社員の男性(48)です。
男性は1日、単独で八ヶ岳連峰赤岳に入山、2日、下山中に「岩場で転落して身動きが取れない」と警察に救助を要請しました。
警察や地元の山岳遭難防止対策協会などが捜索していましたが、悪天候の影響で発見には至りませんでした。
6日午前10時40分ころ、富山県警のヘリが赤岳の南西側斜面(標高約2530m)で男性を発見、救助しましたが、死亡が確認されました。
男性は稜線から約100m下で倒れている状態で発見されたということです。
年末年始の八ヶ岳と言えば、多くの冬山登山者が訪れる名峰になりますが、赤岳の南西側の斜面を滑落されてしまった模様。確か、南西側の斜面は無雪期でも足場が少なく、急峻な斜面でした。今回のケースでは、滑落時は生存しており自らが通報しているので、その点では先ほどのスノーボードのケースとは異なります。
この登山者は年末を山小屋で過ごし、赤岳を登頂してから下山する計画だったのかもしれません。アイスキャンデーを登るために来る方も多いので、来る方のレベルも様々だと思います。
滑落後、マイナス10℃以上の環境で身動きが取れない中、どれだけ生存できるのか想像したくはないのですが、天候が味方をせず間に合わなかったようです。人が多く訪れるようなところでも容易に救助に入れないことが分かります。
お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
このように、ニュースが絶えませんが、
実際に遭難を経験したことのある方はそう多くないでしょう。
けれど、 ”ヒヤっと” したことはあるのではないでしょうか?
問題はそこ。
今回は、そのヒヤっとすることも「遭難の初期状態」と捉え、その心理状況について書いていきます。
遭難初期の心理状態
遭難初期の心理状態とはどんなものなのだろうか?
ダイニングクルーガー効果とは?
これまで見てきた遭難事例や私の経験から、
まず、遭難初期はダイニングクルーガー効果状態にあるケースが多いと考えます。
ダイニングクルーガー効果とは、自分を過大評価している状態であり、
「大丈夫だろう」と、自分に都合の良い思い込みをしていることになります。
人間なので、このように考えることは自然なことではありますよね。
ダイニングクルーガー状態の脳内心理
・そもそも遭難していることに気づいていない「間違ってないはずだ」
・「すぐに登山道に戻れるだろう」
・「そのまま下れば下山できるはずだ」
・「これまでも大丈夫だったのだから今回も大丈夫だろう」
概ねこんな感じ。
遭難事例のインタビューなどでは、遭難初期のことを得てしてこのように振りかえっていませんか。
パニック状態は問題外として、例え冷静であっても、このような心理状態が遭難を回避できないものにしてしまう怖さがある。
後は、私の経験上でもあるのですが、人間の心ってそんなに単純ではなく、
一見冷静でいても、その頭の中では本当に、本当に色々なことが頭を駆け巡っている。
「大丈夫、落ち着け」 「迷ったら、引き返す」 「迷ったら、下るよりも登る」 「どうして間違えたんだろう」 「日没には間に合いたい」 「明日の仕事は休めない」 「体力的に登るのは正直キツい」 「家族に迷惑を掛けたくない」 「なんでこんなリスクのあることやってんだろ」 「死にたくない」 |
これは私が道迷いして2~3分以内に頭をよぎったことです。
こんなことが、エアー抽選機のくじのように宙に舞っているのだw
エアーでクルクル飛び回ってるやつです!
昭和のくじびきと言えば、ガラガラポンと、このエアーくじだった。
頭の中は、色々な認知バイアスがかかっていて、お祭り状態である。これがほんとの遭難時心理状態(ヒヤっとした時も含めて)であると私は思っている。
認知バイアスとは、直感、経験による主観、自分の性格や信念、先入観から、ときに偏った非合理的な判断状態に陥る心理現象である。いわゆる色眼鏡ってやつです。
”いざ” というときほど、人間性が出るって言われますが正にその通りで、とりわけダイレクトに出るわけですよ。遭難時は。
最終的にはパニックに陥らないように、思い巡る様々な考えを整理整頓するしかない。
目標はたった1つ「生きて下山すること」なのですから。
道迷いは慣れてはいますが、登山道復帰するまではハラハラしています。
余談ですが、遭難時でなくても自分の信念や、経験からの主観で何事も判断すると思うので、客観的、公平に物事を判断することって意外と難しい気がしました。
今年も安全な冬山、春山登山を。ではまた!
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なんと!コロナ禍当初は防護服を着て救助にあたっていたんです・・・