
出世するか しないか
なかなか下世話なタイトルかと思われますが、
長い社会人生活を踏まえると、至極まともなテーマです。
この記事は、私の所属する書道会の中学生、高校生、大学生向けに寄稿した偏見コラムをブログ風に改訂を加えたものです。
どうぞお読みください。
出世するか しないか
社会に出て会社員として働くとなると、嫌でも耳にするのが「出世」と言う言葉。
経験と年齢を重ね、より責任のある役割に就くことを出世と呼ばれるが、素直に立派なことだと思う。かつては家族を養うために不可欠である収入が増えることを同時に意味することでもあり、輝かしい言葉であった筈だ。
ところが、今は人によっては不本意な言葉の意味なのだそう。とりわけ現在の「出世」という言葉は良い言葉でもあり悪い言葉でもある複雑な意味を持つ。
PR TIMESの調査によると、20代~40代の男女会社員を対象とした出世に関する意識調査では、「出世したい」が47.5%で半数を割る結果となっている。
社会人はいずれ、出世をするか、しないか。選択肢に迫られる時が来る。
妙なことにそれは、結婚をするか、しないか。の選択に少し似ている。なぜなら、出世をしたくない理由と考え方に共通する部分があるからだ。
出世をしたくない理由で主に挙げられるのが、責任を持ちたくない。仕事に時間(人生)を捧げたくない、人に教えたり指示をしたりする立場に立ちなくないなどが該当する。責任をもって誰かのために時間を捧げ、育てる立場になるという点で結婚は共通する。
では結婚したいなら出世を選ばないといけないのか。いいえ、違います。
長らく社会人の収入が停滞している現代の日本では出世しても収入が上がるとは限らないということです。出世・・それを罰ゲームと揶揄されることすらあります。
責任は増えるが収入はほとんど増えない。ならば出世はしたくないよ。というのが出世したくない人の主張のようだ。短期的に考えれば実際にその通りなので、気持ちはよく分かります。私が昇進した時も責任は増えましたが収入は見事に増えませんでした(泣)
また、結婚して子供がいるなら尚更出世したくないという声もある。男性も育児休暇を取る時代。仕事に捧げる時間が長くなり家事や子育ての手伝いが出来なくなるのは歓迎されない。これも共働きが当たり前な昨今で、時代の変容を表している。
突っ込みたい点としては、出世できる能力があるのであれば、仕事が忙しい中でも夫婦話し合って協力し合える点について決めておくこともできるし、負担をかけてしまうところはどこかで補うことを考えれば良いと思う。もちろん、出世したことが理由で家庭が崩壊するケースも事例としてはあるだろうが、出世=家庭が壊れるから出世したくないとハナから結びつけるのはどうかと思うのだ。
また、結婚の有無と出世の有無を結びつける必要もないだろう。
では、出世しないことが無難で最適な選択なのか。いいえ、それも違います。
出世を責任が増えること、偉くなることという固定観念を捨ててください。
出世はただの役割分担です。
集団で働く以上は誰かがやらなければならない役割分担です。向き不向きがあるのは間違いないですが、一律で避ける風潮は良くないと思う。選ばれた人間が出世するべきであり、自ら勝手に名乗りを上げたり、避けたりするものではない。適材適所で役割分担をすることが昔も未来も関係なく会社と言う組織のあるべき姿であると私は考えます。
これが出世の本質。
(偉くなるというのが甚だ勘違い)
確かに短期的には給料は報われないかも知れない、残業は無くなり、むしろ出世して減ったという方も中小企業では想像以上に多い。
では、会社から評価されて出世を打診されているのに、それを断ったら、誰が代わりをやるのか?自分より経験値の浅い同僚や部下や後輩などに、あなたが報われないと思われる管理職を自分が楽したいがためになすりつける?
管理職や取締役などのポストは、限りがあると同時に誰かしらがやらなければならないので、自分が断り続けている限り、他の誰かがそのポストに就任します。
周囲には能力があるのに、昇進を断り続けている人が居ます。謙遜とかの域を超えているので恐らくは収入の面だとか諸々の条件が合致しないからだと思います。
人の人生、他人がとやかく言う筋合いは無いのだけれど、残業代目当ての出世拒否は少し短絡的だな。と感じます。
管理職になって、プレイヤーとしてもマネージャーとしても成果を発揮できるようになれば、その後、更なる収入を得るための行動、新しい事業を立ち上げたり、独立したり、転職しても良いし、今の職場の役員や経営者を目指す、或いは得意分野を生かした副業でも良いでしょう。
またこれらの新しい行動を起こさなくても、成果が出ているのであれば、収入も堅実に増えているはずです。
したがって、キャリアを積むほど選択肢は広がります。
配偶者、例えばご家庭の奥様からしたら、主人が具体的にどんな仕事をしているか、役職は主任か係長かなどはどうでも良く、興味はないのが大半でしょうけど、給料が高いのであればそれに越したことはないと思ってるはずです(聞いたことはないけどw)なので、短期的には昇進で収入は下がっても、チャンスがあるのであれば早めに昇進して経験を積んだ方がゴール時点でのトータル収入、長期的に見れば額面でも上回るのではないか。
ところで、面談の時に「次の年度、自分の出世、よろしくお願いします。」と言ってきた人が居ます。
嬉しい言葉ですが、普段の仕事ぶり、人間性では現時点で相応しいとは思えず、事業運営に関わる提案もゼロでした。恐らく、偉くなれる、給料が上がるという勘違いがあるのだと思います。
こういったタイプの場合は逆に絶対に昇進させたくありません(笑)
提案があれば別です。昇進して得た権限で、新しい事業を立ち上げて、人を配置して、一定の成果を上げます。など、再現性がリアルで可能性が高いものを明確に説明できるのであれば、一考の余地はある。
次回の出世は私を推薦しておいてくださいよろしくお願いいたします、とか、なんとかお願いできませんか?と頼み込んできたりとか、挨拶みたいに言うのは勘弁してほしい。
前途したが、出世は自分が根拠なく名乗り上げるものではなく、評価され「頼みます。あなたが適任です。」などオファーや打診を受けて承諾することが原理原則かと思います。
それが自然と繰り返され会社が存続していくことが組織の本質。
人手不足もあり、誰かがリーダーをやらなければなりません。自分以上の適切な人材が居ないのであれば、避け続けるのではなく、やはり引き受けて、後輩や部下の面倒を見て、長く存続できる会社にしていくことがサラリーマンのプロ意識だと考えたい。
指圧マッサージのプロ、鉄板を振って料理を手際よく作るプロ。
「プロだなぁ」と思える仕事は、例え専門職ではなく事務仕事1つとっても本当に鮮やかだなと思います。
こんなくだらない仕事・・・とか、責任は嫌だ・・・
なんて言っている場合じゃないな。と自分を鼓舞して欲しい。専門職ではない会社員の世界にもプロ意識というものが間違いなくあります。
職を転々として収入を上げていくのではなく、同じ職場に長い年月働くのであれば、段階的に出世していくことはあり得る事です。
出世するか、しないか。むしろ時間を割いて考えるようなことでもない気がしています。「オファーがあったから応じた」気が付いたらそうなっていた。それでいいじゃありませんか。
社団法人ランナー龍