初任給30万円超えについて思うこと

初任給30万円超えについて思うこと

2025年3月7日 オフ 投稿者:

皆さん、こんにちは。社団法人ランナー龍(たつ)です。

 

近年、就職活動の季節になると

〇〇会社の初任給がなんと30万!

いやいや、今度は〇〇企業が初任給33万!

 

など、豊洲市場の競りのように価格競争になっている昨今。

ニュース記事でも煩わしいほど目に入ります。

 

この記事が果たして読まれるのか分かりませんが、

もしも、読まれるようであればそれだけ関心が高いという判断になりますね(笑)

 

今回は、初任給30万円超えについて考察したいと思います。

最近このような考察記事へのアクセスが増えてきており嬉しく思います。

どうぞお読みください。

 

慌てることは無い

22歳~24歳新卒の給料が30万円となり、

「40歳のオレより高いじゃん!!」「うわぁ、うちの50歳の上司と同じだわ・・」

などと、年上世代を中心に悲痛な叫びが聞かれます。

 

が、

”慌てることは無い” と、思いますよ。

 

右も左も分からない22歳と、勤続20年の社員が同じ給料だなんて許せない!

気持ちは分かります。

ひとまず、一旦落ち着いて、様々な角度から見て見ましょう。

 

 

1.その後順調に昇給し続けるかは分からない

初任給が高いだけでは ”ぬか喜び” となる可能性がある。

初任給の30万円全額が基本給なのか、それとも各種手当が付随しての正味30万円なのかで大きく異なる気はするが、後者の場合、入社数年後に改悪となり、数年後には給料が減っていた・・などという詐欺のような現象も絶対起きないとは限らない。

”やらない理由はない” などと言われている新NISAやiDECOなどの投資も、その後の景気や経済状況、法律面、税制上、政治的な都合でいつ改悪が行われるか分からない性質のものに、無思考、無条件に飛びつくのではなく、余剰資金で行うべきものである。

この投資と一緒で、初任給が高いだけで、そこで働くべきと考えるのは

「飛んで火にいる夏の虫」と同じであり、

後々は、実力に見合わない限り給料は上がらないと考えた方が現実的。見合わない社員は昇給ストップ或いはリストラ候補だ。

若い人は楽して稼げるというのはお門違いで、むしろ実力主義の時代なので、能力あげて行かないと、長く勤め上げるのは難しいかと。

したがって、ベテラン社員は落胆する必要は無い。同時に、そもそも会社が手放したくない本当に優秀な社員には離職対策として、さすがに新入社員よりも高い給料水準にしているであろうから、そもそも新卒の給料なんてそんなに気にしていないかも知れないけど。

 

 

2.新卒の給料が高くたって良いじゃないか

少子化が進んでいるのは間違いない事実であり、今後加速していくのは避けられない。

だからこそ、若手を採用するのは難しく、給料を上げざるを得ない事情がある。それが既存の社員に還元されないのは悲しすぎる。気持ちは分かります。

だけど、よく考えたら後輩が会社に定着してくれるのは嬉しい事ですよね?

若手に仕事を引き継げないと、いつまでたっても楽になれないですよ。

家庭を持ち、家を買い、子供を育てるハードルが非常に高い今の経済情勢で、私もまだ子育て世代ですが、若者には豊かに暮らせるだけの資金は持って欲しいと願っています。そう考えると、新卒の給料が高くてもそれは喜ばしい事でもあると思える。

 

もう1つ、高齢者の年金は、働く世代が負担していて、今50歳40歳の人たちは、将来、20歳30歳の若者から支払われる厚生年金で生活をまかなうことを考えると、

新卒の若い人にたくさん稼いでもらって、その分税金を納めてもらうことが、高齢者を助けることにもつながるので、年金が破綻し廃止されないためにも、若い人に給料がしっかり手に渡って欲しい。という考え方もできます。

 

3.初任給が高いことは生涯で考えるとあまりにも短期的な影響

22歳から65歳まで43年間働くとして、その入社たった1年目の初任給に注目するのはあまりにも短期的過ぎると思う。

初任給で一生が決まりますか?答えはNOです。

1個目でお話した、順調に昇給し続けるかは分からないのと同じですが、

初任給33万円で就職したAさんよりも、初任給28万円で就職したBさんの方が生涯稼いだ。ということが、まことしやかに起こるのが社会人人生である。

能力がまったく同じだった場合でもこういうことが起きる。

 

ゆえに、初任給が高いことに釣られてはいけない。

例をいくつか挙げますが、先ずは「ユニクロ」で世界的有名企業となったファーストリテイリング。

「ユニクロ」展開のファストリ、初任給33万円に…年収は10%増の500万円強

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは8日、新卒の初任給を現行の30万円から33万円に引き上げると発表した。年収は約10%増の500万円強となる。また、国内正社員の年収を3月から最大11%引き上げる。初任給や賃金を引き上げる動きが拡大しており、報酬体系の見直しで優秀な人材の確保を図る。

引用:讀賣新聞オンライン 2025/01/08 17:57より

これは凄いと思う、20歳代の年収といえば、ざっくり200万~300万と長らく言われてきており、以降の年代を含めても一般的に450万くらいが中央値と言われている年収。それを1年目から超えてくるのは凄まじく「嘘だろ・・」と思わざるを得ない。

ゲームで言えば ”強くてニューゲーム” ”億万長者からスタート” のようなチート状態。

ただし大事なのは仕事の中身であり、本当にこの会社の仕事がしたいのか。得意なことなのか。が大事。

言うなれば、月収が5万安くなってもここで働くといった気概がないと厳しいかも知れない。

嫌な仕事で、朝から晩まで働いてヘトヘト。給料を貰っていることすら忘れていて、とにかく出社するのに精いっぱい。というサラリーマンは多い。

売り上げの責任が重くつらい。目標がハードすぎる。

など、給料が高いという事は、それだけの価値を求められるのは当然である。

それが自分にとって好きなことだったり、夢であったり、使命感があったり、或いは働き甲斐があることで乗り越えることは出来る。

言い換えると、それがないと乗り越えられないだろう。

 

ユニクロは、当然日本全国にあり、海外にも出店している。そこで働くという事は当然、各地を転々とする働き方になるだろう。それが無理な場合、地域限定社員という制度があった気がするが、その場合当然、給料は33万円ではない。

会社に尽くすという働き方は、当たり前である一方、それだけが人生ではない。

人生観や違う働き方を求めて路線を変更する社員も多いのではないか?

 

それを裏付けるのが離職率だ。

ユニクロことファーストリテイリング社の離職率は、転職サイト等の口コミによると、3年で50%離職、5年で80%離職との事だ。真否は不明だが同社は過去から離職率の高さを指摘されている。だからこそ給料を上げて人を集めていると考えれば合点がいく。

私も今の職場は勤続16年目になるが、16年前一緒に働いていた同僚もゼロではないが限りなくそれに近い。

なので、中小企業であれば3年間で新卒の3割がもう辞めているなどということは結構普通という認識。離職率が10%(1割)とかは一昔前の大企業や公務員の話。

私は医療の業界だが、事務職は別にしても、医師看護士などの医療従事者が新卒から定年まで在籍していることは奇跡で、離職率100%の病院などもあるんじゃないかな。

離職は悪い事ではない。続いては医療業界との比較だ。

 

東京女子医大「医師待遇の不利益変更」に募る疑念

「看護師から言われたことがあります。そんな給料でなぜ医者やっているんですかと。給与明細をお見せしましょうか」

苦笑いしながら、若手医師はスマートフォンを取り出して、給与明細の画面を見せてくれた。「本給 約20万円」。これに諸手当がついても、額面で30万円前後。そこから社会保険などが引かれる。ちなみに、同世代の看護師は本給27万円程度だという。

引用:東洋経済オンライン ワークスタイル 2021/06/28 13:00記事より

なんと、医師の給料が20万円台と、東京女子医大のニュースで一時騒ぎになった件ですね。下手したら新卒社会人より少ないなどの物議を醸しました。医者で給料20万円はびっくりしたでしょうね。

東京女子医大は、研修医で25万円で、研修医でなくても若手だと記事の通り総支給で30万程度だとか。また、意外と他の病院でも似たような金額のケースもあったりと、驚きを隠せない医師の給与事情が垣間見られました。

そこらの一般サラリーマンの方が高いじゃん。とお思いかもしれないが、それはニュース記事の報道の仕方にも誤解を生じる部分が多大にある。

医師は、数多くの職種の中でも最も給料水準の高い職種であることは間違いありません。

 

すなわち、新卒社員の方が稼げているという判断は早計ということ。

その医師はその時点では20万ですが、非常勤医師として複数の病院を掛け持ちしていたりして、別枠で高額を稼いでいる可能性があります。そうでなくても臨床経験や職位を上げながら、数年以内に年収800万、1000万、と上げ、

気が付いたら40歳で1500万、働き方次第では3000万くらい稼ぐ可能性すらあるのだ。

 

食べていくだけで良ければ、無理に稼がなくてもいいし、稼ぐ手段もある。割と選択の幅は広い。無論、当直医や休む間もなく働く医師などの過労死の例があるから激務の中必死に働く医師がいることも忘れてはならない。

 

結果、早々に、初任給20万で働いた医師の生涯年収が初任給33万の社員の生涯年収に追いつくどころか、圧倒的大差で追い越していた。ということになっているはずです。

人命を救助するという使命とともに、収入プランもトータルで考慮している(はず?)

 

極端な例を挙げてしまったが、つまりは単純に、長いサラリーマン人生の中で初任給で全てが決まると言うのはあまりにも短絡的な話であるという事。

そして、ユニクロでも80%の人が退職し、その大多数が33万円よりも安い給料の会社に転職しているであろうことからも、初任給の高さだけで判断するべきではない理由に充てることが出来る。

ユニクロはやる気があれば若手でも出世する可能性があるということだが、逆にベテランはいつ若手に立場や給料がひっくり返されるかわからず、永遠と成果を上げ続けるしかなく、それはそれは長くハードな戦いであると、勝手ながら想像してしまう・・・。

給料のためだけに働いている?若者に抜かれた自分は不要な存在?そんなことを考えるためにここで働いているんだっけ?いや、違う。と思いを巡らす人も居そうである。

給料は高かったけど、もっと人生優先したいことのために生きよう。からの辞表提出。

給料の高い会社の離職率が高いのは、

「働く」ということが額面だけではないことへの裏付けです。

 

いかがでしたでしょうか。

給料は、 ”その人がどれだけ社会に貢献できているか” が反映されているものと定義します。

新卒の方がベテランと同じ月収33万円分社会貢献できているか?

当然、出来ているはずがありません。

 

つまり、会社は先行投資しているのです。

数年経って、その給与対価の社会貢献が出来ていないと見なされてしまうと、その後の昇給は難しく、下手すればリストラ。

したがって、初任給が高いと安心どころか、その分の社会貢献をするという覚悟を持つべきであり、初任給が安くても昇給の伸びしろが高く初任給が好待遇の同級生の年収を数年後には超えてしまった・・ということも起こりうる。

 

仕事選びは奥が深い。

新卒の初任給が高額化してきているが、それは時代が川のように流れているのに過ぎず、その行先は誰も分からない。

だからこそ、次の世代への期待を込めて喜びつつも、静観し、慌てず毅然としているのが最良と考えるのでした。

皆さんはどう思っていますか?ではまた!