「登山が得意なランナー」「マラソンが得意なランナー」トレランでは、どちらが強い?
皆さん、こんばんは。社団法人ランナー龍(たつ)です。
これはトレラン初心者にとって必ずと言っていいほど、ぶち当たる疑問ではないでしょうか。
登山が得意な人と、マラソンが得意な人とでは、どちらがトレランで強いのか。
そしてトレランでは、登山練習とマラソン練習どちらを重点的にやるべきなのか。
中々深いテーマの疑問について、トレラン歴9年に達した経験値の範囲で答えてみたいと思います。
見ていっていただけると、嬉しいです。
意見が分かれそうなテーマですね。
もくじ ・仮説1 現在の日本人トップ選手のバックグラウンドから考えてみる ・仮説2 フルマラソンのタイムが速い方がトレイルでも速いか試してみる
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仮説1 現在の日本人トップ選手のバックグラウンドから考えてみる
では、今実際に活躍しているランナーはどちらに偏っているのか、やはり皆、陸上選手なのだろうか、
2023年の世界選手権代表選手より、そのバックグラウンドをチェックしてみよう。
・上田瑠偉(うえだ るい)選手【マラソン寄り】
当時故障に悩んだとは言えど、駅伝の名門、佐久長聖高校出身につき、バリバリのロードランナー。
・森本幸司(もりもと こうじ)選手【登山寄り】
国体山岳競技出身。マラソンなども経験しているが、山が主戦場のようだ。
・川崎雄哉(かわさき ゆうや)選手【マラソン寄り】
中高陸上部。自衛隊入隊後も陸上を続ける。
・西村広和(にしむら かずひろ)選手【マラソン寄り】
陸上経験の下地無しでマラソンを始めている。トレイルでもロングが主戦場。
・吉野大和(よしの やまと)選手【マラソン寄り】
中高陸上部。その後陸上から離れるもトレランをきっかけに再び走り出す。
・近江竜之介(おうみ りゅうのすけ)【登山寄り】
幼少期より山を駆けまわるのが身近であり、小中高陸上部。高校卒業後すぐにプロ山岳ランナーとして活動を始めている。登山マラソンどちらともとれるが、山が主であることから登山寄りに認定。
・甲斐大貴(かい ひろき)【マラソン寄り】
小中高大学、実業団に至るまでランナーとして活動しているようだ。その延長で現在は山岳レースやウルトラマラソンの競技に移行している。
・小笠原光研(おがさわら こうけん)【登山寄り】
サッカー部出身。トレイルランニングを知り魅了されてからサッカー部引退を機に本格的に活動。
・秋山穂乃果(あきやま ほのか)【マラソン寄り】
大学では陸上部で、練習で山を走ることはあった。トレイルランニングの大会は社会人になってから出場するようになった。
・高村貴子(たかむら たかこ)【登山寄り】
スキー部出身。そのオフトレーニングでトレランを知り魅了され、世界選手権の選手として様々なレースに出場する。
・吉住友里(よしずみ ゆり)【マラソン寄り】
大学在学中、陸上経験の下地無しでランニングを始める。その後山に魅了され、トレランの世界へ。
・楠田涼葉(くすだ すずは)【マラソン寄り】
バスケ部出身。社会人になりランニングを始め、練習の一環で山を走るうちに、その楽しさにのめり込むようになる。
合計 マラソン寄り8名 登山寄り4名
以上。
これはあくまで私の主観による判断だが、内容は日本陸上競技連盟のマウンテンランニング世界選手権の日本代表プロフィールを引用したものだ。
「登山寄り」の選手も当然のこと走らせても抜群に早いことは言うまでもない。
しかしながら、トレランもタイムを競う長距離走であるため、持久走が速いことが求められる。したがって、バックグラウンドとしては陸上部経験者など、マラソンやロードランが主戦場である選手が大多数の結果となった。
やはり日本代表レベルとなると、絶対的走力に、山での登攀能力が備わっているといった具合。
どちらかというと、登山の能力が脇役的な立ち位置に思えた。勿論、その能力も重要とはいえども。
では、マラソンが得意なランナーが強いで決まりか?
答えはNOです。
仮説2 フルマラソンのタイムが速い方がトレイルでも速いか試してみる
では、続いて、私自身の体験談の検証になります。
これまでトレランのレースにおいて宿などで同席した、たくさんの方と力比べをしてきました。
まず、走力を計るベースとなるのが「フルマラソンの完走タイム」
私が直接見聞きした限りではトレランに出場している人のほとんどがフルマラソン完走経験者である。
そもそも、リスクがあるトレランに出る時点で、平地のマラソン大会の市民ランナーよりも熟練度が高い場合が多い。
フルマラソンの完走タイムを聞くと、たいてい、私が最下位のケースが多く、悲しいが、いざトレランのレースになると、フルマラソンの記録イコールにならないのだから面白い。
フルマラソンで私より速い人と、トレランで競ってみた結果は以下の通りです。
記憶から記録を思い返してみる。筆者の私のフルマラソンBEST記録は3時間33分。
3時間17分の選手 = 私が勝った
3時間14分の選手 = 私が勝った
3時間06分の選手 = 私が負けた
3時間02分の選手(女性) = 私が勝った
2時間56分の選手 = 私が負けた
(女性)以外は全て男性です。
レースで居合わせて雑談になった時にさりげなく聞いたのですが、聞けど聞けど私より速くて泣けてきます。
ところが、ふたを開くと、フルマラソンが3時間10分台以降の選手には負けるケースが少ないことが分かりました。私のBESTが3時間33分なので、平地で走れば負けるのは私のはずです。
フルマラソンでサブ4以上の領域で20~30分の走力の差は相当の開きがあると考えてよいです。これがトレイルになると、このような格上ランナーとも勝負ができるんだなと思ったものです。
だが、流石に3時間10分を切る選手には負けるパターンが多く、トレイルでもサブ3の選手には勝てたためしがありません。フルで20分以上差があると勝つのはきついです。
このように私の登山の経験値が、足の遅さをフルマラソンの20分相当をカバーするアドバンテージになっていると、複数回試した結果から感じ取ることが出来ました。
ちなみに上記は1つのレースで複数人に聞いたのではなく、数年間にわたり色々なコンディションのレースで試した結果です。
見る人次第では、くだらない内容かも知れませんが、登山の経験値がマラソン走力の低さを補うことが身をもって検証出来て、非常に有意義でした。
登山経験の優位性は間違いなさそうですが、個人差が激しく、定量的に説明することは難しいです。
私の場合は山の登りでたくさん追い抜いて、ロードに出たら一気に抜かれます(笑)
とりわけ先ほどの代表選手のバックグラウンドでは、走る速さが必須に感じましたが、今回の検証では登山が得意なことも重要な要素であることも分かっていただけたかと思います。
結論 登山が得意なランナーの方が強い
トレイルランニングはマラソンのような持久走と同じカテゴリの競技ですが、フィールドは山です。
ロードを走るときに使う筋肉と山を歩く(走る)筋肉は違いますし、特に登りや下りに慣れているか否かで、競争では相当の開きが出るでしょう。
天候や、気温の変化、地面のコンディションの変化や不測の事態などへの応用力は、当然、登山が得意な方が上手です。
もし登山に非常に不慣れだった場合は、大怪我をしないように慎重に通過したり、登りで足が攣ってしまったりするので、多少マラソンのスコアが優れていても、若干足は遅いが登山が得意なランナーに抜かれてしまう結果になるでしょう。
実際、私は年齢と共にハーフやフルマラソンのタイムが下がってしまい、中々上がらなくなりましたが、登山をバリバリ続けているからか、何故かトレランのレースはタイムが上がり続けている矛盾が生じています。
競技するステージが山の中である以上、登山の経験値は絶対に軽視することは出来ないでしょう。
登山はランニングの練習の代わりにはならない
では、トレランで強くなるために、登山だけをノコノコと続けていれば速くなるのかと言うと、それは誤解です。
登山の経験値は重要ではあるものの、やはり走るレースなので、心肺機能と共に走り続ける感覚は磨いておく必要はあります。
心肺機能だけは、登山の登りで早歩きをすれば、全力疾走に近い負荷を得られるかもしれないけど、走力は走り込みを省いては向上しません。
心拍トレーニング、閾値走、インターバル走、坂ダッシュ、ビルドアップジョグ、ロングスロージョグ、足りてないと思う部分を補う走り込みは、走力アップをしたいなら外すことは出来ないし、
何より、登山を走ったことの代わりにすることは出来ないと思っています。
トレランをやるなら、ゆっくりでもいいのでロング走は絶対に不可欠。
長い長い時間を走り続ける事を体に覚えさせたり慣れさせる必要があります。
「登山が得意」「マラソンが得意」どちらがトレランで強いか、いくつか見方があります。
マラソンでは見た目がモデルのようにスラっと痩せて無駄のない体型の方が強いですが、トレランだとそうとも限らない。登山ばかりやっているおじさんが何故が強かったりするので、やはりマラソンとは違いますね。それでもよく見ると登山で身に付く筋肉が発達していたりします。
登山が得意だとトレランでは強いですが、 ”速い” となると、マラソンの走力も鍛えられていることが条件になってきますので、
上位1割から表彰台レベルとなると、結局マラソンで言うサブ3以上の走力が求められそう。
つまり、「マラソンが得意なランナー」であるべき要素が表面化してきます。
どちらも重要ですが、
一般的なレベルや完走レベルでなら、「登山が得意なランナー」が強いと結論付けたいと思います。
ではまた!