西丹沢で発見された遺体について
皆さん、こんにちは。社団法人ランナー龍(たつ)です。
2023/11/16(木)平日、西丹沢に入山された70歳の男性が戻らないということで捜索願いが出されていたようですが、残念ながら同月19日(日)に遺体となって発見されたという事がありました。
ニュースの記事は次の通りです。
山北町・西丹沢で遺体発見 横浜の70歳男性か、帰宅せず家族から不明届
19日午前11時40分ごろ、山北町中川の県立西丹沢ビジターセンターの東側約2・3キロの山中で、男性が死んでいるのを松田署の山岳救助隊が発見した。
署によると、横浜市港北区に住む男性(70)とみられ、16日に日帰りの予定で1人で同センターから入山。男性が帰宅しないため、17日に家族から県警に行方不明届が出されていた。
男性は登山ルートから少し離れた場所で倒れており、同署が死因や身元の確認を進めている。
引用:カナロコ 事件事故 | 神奈川新聞 | 2023年11月19日(日) 18:25より全文抜粋
捜索願い提出後、比較的早期発見だったのに関わらず、無念の結果となってしまいました。
お亡くなりになられた方へのご冥福をお祈り申し上げます。
秋以降、特にこの西丹沢エリアには足しげく通っており、10月、11月で3度も同エリアを歩いてきましたが、このような事故が起きていたことに全く気が付きませんでした。
私が最後に西丹沢を訪れたのが、11月13日で、このときは歩荷として山小屋運営のお手伝いのため入山していました。遭難された方が入山したのが16日と、3日違いであることが分かります。
人が少なく静かな西丹沢ですが、紅葉の時期はそこそこ人も訪れるシーズンになります。それでも、平日という事もあり、単独で入山した場合、檜洞丸などの山頂に出るまで誰一人として合わない可能性もあったでしょう。
目撃情報も無かったものと思われます。
特に親しんでいる山域で事故が起こるのは悲しく、事故が起きた場所の予測や、当時の状況について少し考察してみたいと思います。
1つポイントとして挙げておきたいのが、早期発見であったという事。
これには、様々な要素が重なっていると推察しますが、入山した翌日には捜索願がだされているということは、登山者本人が家族に西丹沢を登ることを伝えていたという事が伺えます。またビジターセンターに登山届けも出されていたのではないでしょうか。
こういったことが、山域の特定になり、早期発見につながります。
予定時刻に戻らなかった時点ですぐ捜索願がだされるということは、予め家族が心配していたことも予想できます。年齢もあってか、或いは登山にそれほど慣れていなかったか、不安があったのかもしれません。
西丹沢は、丹沢の中でも難易度が高い部類に入るので、ご高齢の方や登山に不慣れな方が単独で入るのは、正直なところおすすめは出来ません。
では、西丹沢とはいっても、どこを登る予定だったのでしょうか。
はっきり言って、どの方面に登っても遭難しやすいエリアに直結するので、それだけだと断定が難しいです。ところが、ニュースには ”東側約2・3キロの山中” という情報が出ているではないですか。であれば、ビジターセンターから東側と言えば「檜洞丸」か「犬越路」のどちらかになる。
まあ、一般的には檜洞丸だろう。
しかし、神奈川県警の山岳救助隊によると、檜洞丸のルートであればあまり道迷いによる遭難はそう多く発生しないという事らしいが・・!?
ゴーラ沢出会
神奈川県警さん、めっちゃ遭難多発警告の登り旗だしてますよね^^;
単純に道迷いであれば、積雪の厳冬期でもない限り3日間では生き延びれる可能性が高い。恐らく入山当日には滑落で亡くなられていたのではないかというのが私の予想である。
ニュースではこの辺りの詳細の補足は無い。
仮に滑落だとして、後はその位置関係だが、それを予測したのが下の地図である。
緑のマークは西丹沢ビジターセンター。そこから東側2km~3kmを赤で弧を描いた。
利用された登山道は、一番上の犬越路への登山道か、檜洞丸へのツツジ新道か、石棚山稜かの3択だと考える。(石棚山稜はちょっとマニアック)
一番メジャーなのがツツジ新道、ここだって「?」マーク以外のところは明瞭で迷うことは無いだろうが、転倒と滑落に注意しなければならなく、それなりの緊張感は必要ではある。
私の見立てでは、ツツジ新道の「!」マークあたりで転落して地図の上、本棚沢方面に数百メートル転落してしまった。或いは、ゴーラ沢出会いの「?」マークあたりでルートを見落とし、登山道を外れ、他の林道もしくは獣道もしくは砂防ダムなどから転落したなどが考えられる。
ビジターセンターから2.3kmだとゴーラ沢出会のほうが距離的には近いかも知れない。下山時に道を誤って、あさっての方角に進んでしまった可能性もありえる。
このように少し思慮に更けていると、山と渓谷オンラインの特集で、神奈川県警山岳救助隊の松田署の方のインタビュー記事を見つけた。
なんと、それはツツジ新道の「!」マーク付近から転落した事例について述べているものであった!偶然にも・・
丹沢・檜洞丸の滑落に見る、山岳遭難の現在
神奈川県警山岳救助隊は事故を防ごうと必死の努力を続けているが、2022年も遭難が相次いだ。気候は比較的温暖で、標高もさほど高くない神奈川の山で山岳遭難が後を立たないのはなぜなのか。
2022年5月22日(日)14時55分ごろ、檜洞丸ツツジ新道を高齢者6人パーティが下山中に、先頭を歩いていた男性(81歳)が登山道上で転倒した。男性は谷側の立ち木に座り込む体勢となったあと、立ち上がった際に、またバランスを崩しよろめいて谷に滑落した。通報を受けて山岳救助隊が出動し、翌23日に現場から約180m下の沢で男性を発見。病院へ搬送後に死亡が確認された。
――どういう救助活動だったのですか?
頭部、顔面とも大きな傷を負っていて、心肺停止状態ということでした。 夜間作業を避けるため、その日はいったん下山しました。翌日、遺体をツツジ新道に引き揚げ、人力による搬送作業を行なって、ほぼ一日がかりで下山完了しました。
谷側に落ちてしまうと止まらない。西丹沢の山っていうのは登山道の脇を見ると、枯れ葉が積もっていて、落ちても死なないだろうと感じる所が多いですけれども、実際には40~50度の傾斜が続いていて、1回落ち出すと止まる所がないのです。つかまるものが何もなくて、どんどん落ちていってしまう。見えなくなった付近でだいたい切れて垂直に落ちる、そんな感じです。
メンバーに60代、70代の方もおられました。滑落者の方はリーダーで、先頭を歩くのが恒例になっていたようですが、特に下山時はそういうことも考え直していただいて、体力のあるサブリーダーの方が前になって、後ろにもフォローできる方がいるとか、仲間同士で安全性の高い方法を工夫してほしいと思いました。
一部分のみをつなぎ合わせた抜粋であるため、詳細に確認されたい方はリンクより実際の記事をお読みください。
80代の方が登るにはかなりキツイ登山道かとは思いますが・・・
とはいえ、若いと言って事故にならないというわけではなく、いつ誰が起こしても不思議ではないという事を肝に銘じておく必要がありそうだ。
単独だと初期通報が遅くなってしまうこともリスクと捉えておかなければならない。
皆様にはこのような事例も考慮しつつ、来年も気を引き締めて安全登山を楽しんでいただけたらと思っております。
ではまた!